
アジアのピックルボールの広がりを、ベトナム・中国・インドなど国別に、確度の高い数字と出典つきでまとめました。結論は、アジアはすでにアメリカに次ぐ第2の中心で、日本は「遅い側」にいるということです。
- アジアではベトナム・中国・インドが先行し、2025年からプロツアーと国際大会がアジアで開かれるようになりました
- 「アジアで8.1億人がプレー経験あり」はオンライン調査の推計で、各国の実数(コート数・公式発表)とは桁が異なります
- 日本は競技人口約33万人・認知率13.1%(2026年3月)で、アジアの中では広がりが遅い側にいます
アジアでピックルボールはどれくらい広がっている?
アジアはすでにアメリカに次ぐピックルボールの第2の中心で、2025年にプロツアー「PPA Tour Asia」が始まり、2026年にはアジア初のワールドカップがベトナムで開かれました。先行しているのはベトナム・中国・インドの3か国で、シンガポール・マレーシア・フィリピン・タイが続き、日本と韓国は遅い側にいます。
アメリカが「コミュニティ → 施設 → プロリーグ」の順に60年かけたのに対し、アジアの多くの国では、有名人のSNS投稿とプロ大会が先に火をつけ、コートが後から追いかける逆の順番で広がっています。2026年9月時点の主な動きは次のとおりです。
年月 | できごと |
|---|---|
2025年1月 | インド・ムンバイでプロリーグ World Pickleball League が開幕 |
2025年7月 | PPA Tour Asia(プロツアーのアジア版)がマレーシアで初戦 |
2025年7月 | UPA Asia×YouGovがアジア12の国・地域の調査を発表 |
2026年 | 中国のピックルボール・サーキットが年間約1,000大会規模に(新華社・2026年9月) |
2026年8〜9月 | ベトナム・ダナンでピックルボール・ワールドカップ(アジア初開催) |
2026年(予定) | チーム制リーグ MLP のアジア版が計画中 |
出典: PPA Tour Asia、大会公式発表、新華社(2026年9月14日)。2026年9月時点で確認。
国別の現在地は?
アジアの中でも国ごとの温度差は大きく、コート数や公式発表で「実数」が確認できるのはベトナム・中国・インドの3か国です。ほかの国は認知率などの調査値はあっても、コート数や人口の公式な数字はまだ出ていません。
国・地域 | 段階 | 確度の高い数字・事実 | 時点・出典 |
|---|---|---|---|
ベトナム | アジアで最速 | ホーチミン市のコートが2023年中盤の2面から1,000面超へ。2025年1〜10月のパドル販売140万本(前年比689%増)。2026年ワールドカップ開催地 | 2025年12月・VnExpress International |
中国 | 行政と製造が主導 | 定期的にプレーする人約800万人、経験者約2,000万人。河南省鶴壁市だけでコート1,600面。国内市場規模18億元超(2025年)。10の省・地域が2026年の省運動会に採用 | 2026年9月・新華社(国営) |
インド | プロリーグ先行 | プレイヤー5万人超・コート500面超(2024年9月時点)。2025年1月にプロリーグ World Pickleball League 開幕 | 2024年9月・Times Now / 2025年・リーグ公式 |
シンガポール | 都市型で成熟が早い | 認知率70%(アジアで2位) | 2025年7月・UPA Asia×YouGov |
マレーシア | 大会誘致で急伸 | 認知率の伸び132%(2023→2024年)。PPA Tour Asia初戦の開催地(2025年7月) | 2025年7月・UPA Asia×YouGov |
フィリピン・タイ | 連盟整備・大会増加中 | 公式なコート数・人口の公表なし | — |
韓国・台湾 | 日本に近い段階 | 台湾はパドルの製造拠点の一つ。公式なコート数・人口の公表なし | — |
日本 | 遅い側 | 競技人口約33万人、認知率13.1%。2026年に統括団体が Pickleball Japan(PJ)に一本化 | 2026年3月・株式会社ピックルボールワン調査 |
出典は表内のとおり。UPA Asia×YouGovの数字はオンライン調査の値で、次の見出しで読み方を説明します。
ベトナムはなぜアジアで最も速い?
ベトナムは若い人口・安いコート料金・有名人のSNS投稿・テニスコートの転用・国際大会の誘致が同時に働き、2年でホーチミン市のコートが2面から1,000面超に増えました。1時間15万〜25万ドン(約900〜1,500円)のコートを4人で割ると1人300円前後で、若い層が週に何度も通えます。
2026年8月30日から9月6日にはダナンでピックルボール・ワールドカップがアジアで初めて開かれ、ベトナムは「アジアのピックルボールの中心地」として国際的に認められました。詳しくはPICKLYのベトナム解説記事で扱っています。
中国は何が違う?
中国は、スポーツ当局と地方政府が主導してコートと大会を一気に整備している点と、パドル・ボールの製造拠点である点が他国と違います。国営の新華社(2026年9月)によると、定期的にプレーする人は約800万人、経験者は約2,000万人で、国内市場規模は2025年に18億元を超えました。
- 行政主導のコート整備: 河南省の鶴壁市は2025年までにコート1,600面を整備し、国際招待大会(14の国・地域が参加)を開催。10の省・地域が2026年の省運動会にピックルボールを採用
- 大会の量: 中国ピックルボール・サーキットは2024年の約80大会から2026年には約1,000大会規模に拡大、20超の省・地域の99都市で開催
- 製造: パドル・ネット・床材のメーカーが欧米・東南アジアへ輸出。世界で売られるパドルの多くが中国・台湾で作られている
出典: 新華社「Pickleball in China: How a tiny ball is driving a big industry」(2026年9月14日)。国営メディアの数字のため、他の調査と併記して読むのが安全です。
インドはプロリーグが先に来た
インドは2006年に競技が持ち込まれ、2025年1月にムンバイでプロリーグ World Pickleball League が開幕するなど、「見るスポーツ」としての整備が先に進んだ国です。実数としては、2024年9月時点でプレイヤー5万人超・コート500面超、毎月40〜50面のコートが新設されていると報じられています(Times Now)。
クリケットとテニスの人気が高く、元テニス選手や俳優がリーグの創設・投資に関わっている点はアメリカのMLPと似ています。人口14億人の国なので、コートが追いつけば規模はアジア最大になる可能性がありますが、2026年9月時点の実数はまだ小さい段階です。
「アジアで8億人」という数字は本当?
「アジアで8.1億人がプレー経験あり、月1回以上プレーする人が2.8億人」という数字は、オンライン調査の回答率を各国の人口に掛けた推計で、各国の実数とは桁が異なります。プロ団体UPA AsiaとYouGovが2025年7月に発表したもので、12の国・地域で14,000人に聞いた調査です。
国 | UPA Asia×YouGovの推計(2025年7月) | 別の出典による実数 |
|---|---|---|
インド | 月1回以上プレー 1億7,800万人 | プレイヤー5万人超(2024年9月・Times Now) |
中国 | 月1回以上プレー 6,000万人超 | 定期的にプレー 約800万人(2026年9月・新華社) |
ベトナム | 頻繁にプレー 1,600万人超 | ホーチミン市のコート1,000面超(2025年12月・VnExpress) |
日本 | 個別の数字は非公表 | 競技人口約33万人(2026年3月・ピックルボールワン) |
出典: UPA Asia「Asia: The Next Frontier」(2025年7月)、各国の報道・調査。
差が生まれる理由は、オンライン調査はインターネットをよく使う都市部の若い層に偏りやすく、その回答率を農村部も含む全人口に掛けると実態より大きく出るためです。「認知率が急に上がった」「18〜35歳が中心」「62%が直近2年で知った」という傾向は信頼できますが、人数として引用するのは避け、コート数や公式発表と併記するのが安全です。
日本はアジアのどこにいる?
日本は競技人口約33万人・認知率13.1%(2026年3月時点・株式会社ピックルボールワン調査)で、アジアの中では「知られていないが、知ると始める人が多い」遅い側の段階にいます。興味があると答えた潜在層は約1,189万人で、競技人口の36倍にあたります。
アジアの先行国と比べると、日本に足りないのは次の3つです。
- コートの供給スピード: ベトナム・中国は屋外の転用・簡易コートで一気に増やしましたが、日本は屋内の専用施設が中心で増え方が緩やかです
- 「かっこいい」を先につくる発信: ベトナムでは有名人のSNS投稿が、インド・中国ではプロリーグと大会が入口になりました。日本ではテレビ露出はあるものの、継続的な発信の担い手がまだ少ない状態です
- 国際大会との接続: PPA Tour Asia・ワールドカップ・MLP Asiaは東南アジアを中心に回っており、日本はその輪の外にいます
一方で、2026年に統括団体が Pickleball Japan(PJ)に一本化されたこと、大手スポーツメーカーや不動産・メディア企業の参入が始まったことは、他のアジア諸国より整った土台です。
アジアの数字を使うときの3つの確認点
アジアの数字を企画書や記事で使うときは、「推計か実数か」「誰が発表したか」「いつの数字か」の3点を確認してください。アジアは国ごとに調査の主体と方法が違うため、この3点をそろえないと比較になりません。
- 推計か実数か: YouGovの「◯億人」は推計、コート数・大会数・公式登録者数は実数。人数を出すなら実数を優先し、推計は「調査による推計」と添える
- 誰が発表したか: プロ団体(UPA Asia)、国営メディア(新華社)、業界企業(ピックルボールワン)は、それぞれ普及を後押しする立場にある。第三者の数字ではないことを明記する
- いつの数字か: アジアは年単位で数字が数倍動く。1年前の数字はすでに古い可能性があるので、「◯年◯月時点」を必ず添える
よくある質問
アジアでピックルボールが一番盛んな国はどこですか?
勢いではベトナム、規模では中国です。ベトナムはホーチミン市のコートが2年で1,000面超になり、2026年にアジア初のワールドカップを開催しました。中国は定期的にプレーする人が約800万人と報じられています(2026年9月・新華社)。
アジアのピックルボール人口は何人ですか?
同じ定義で数えた公式の数字はありません。UPA AsiaとYouGovの調査(2025年7月)は「プレー経験あり8.1億人」と推計していますが、オンライン調査の回答率を人口に掛けた数字で、各国の実数(インド5万人超、中国約800万人など)とは桁が異なります。
日本はアジアの中で遅れていますか?
競技人口約33万人・認知率13.1%(2026年3月時点)で、ベトナム・中国・インドより後ろにいます。ただし潜在層は約1,189万人と多く、統括団体の一本化や大手企業の参入など土台は整いつつあります。
アジアで開かれる国際大会にはどんなものがありますか?
プロツアーのPPA Tour Asia(2025年7月開始)、2026年にベトナム・ダナンで開かれたピックルボール・ワールドカップ、中国各地のサーキット大会、インドのWorld Pickleball Leagueなどがあります。チーム制のMLP Asiaも2026年に計画されています。
まとめ
アジアはすでにアメリカに次ぐピックルボールの第2の中心で、ベトナム(勢い)・中国(規模と行政)・インド(プロリーグ)が先行し、2025年からプロツアーと国際大会がアジアで回り始めました。「8億人」のような推計は各国の実数と併記して読み、日本は競技人口33万人・認知率13.1%の「広がる直前」の段階にいます。
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